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近年、CMなどでもおなじみのヨクイニン。もっぱら「イボやシミが消えお肌はツヤツヤ」といったうたい文句の類いで、女性を引きつけているようです。
でも実はどんなイボにも効くというわけではないし、速攻で美肌になるわけではありません。逆にその薬効を理解すれば意外なところに効果を発揮してくれるのです。
ヨクイニン(薏苡仁)とは、イネ科のハトムギのタネから硬い皮を取り除いたもののことです。
ハトムギが生えているのを見ることは少ないかもしれませんが、その姿は女の子なら一度は集めて遊んだ記憶があるあの「じゅずだま」にそっくりです(上図右)。非常に近い仲間ですが、タネはじゅずだまほど硬くはなく、皮を剥くと白い中身がでてきます。これを煎じて成分を抽出した液体を、乾燥して固めたものがエキス製剤です。
このヨクイニンエキス錠を処方する際、健康保険が適用される症状は「疣贅(ゆうぜい)」となっています。この「疣贅」とはイボのことです。
ここで気をつけなければならないのは、私たちが通常考えるイボと皮膚科で定義されているイボには違いがあるということです。イボイボサンダルとか言うくらいだからブツブツ出っ張ってるならなんでもイボだろうと思いきや、皮膚科においては「ウイルスに感染しそれが原因でできたイボ」限定だったのです。
どう見分けるのかと言われると、皮膚科のお医者さんでも苦労しているそうですが、代表的なものは子供の手にできる白っぽくもこもこした「水イボ」です。歳を取るとできてくる、ぴょこんと飛び出て皮膚がヨレたようなイボや、出っ張ったホクロはウイルスとは無関係なのでヨクイニンはあまり効果がありません。(全くないと言えない理由は後述)
イボを作るウィルスはHPV(Human Papilloma Virus:ヒトパピローマウイルス)です(上図左)。この怪しげなポマンダーのような姿と、できてくるイボの形状がなんとなく似てると感じるのは筆者だけでしょうか…?
どこかでHPVという名前を聞いたことがあると思った方は女性の健康管理に造詣が深い方かも。
そう、あの女性の敵「子宮頸がん」の原因と言われています。わりとありふれたウイルスですが、なんと現在わかっているだけで100種類以上も仲間がいてその種類と感染部位の組み合わせで実にさまざまな症状を引き起こします。
・皮膚が良性のHPVに感染:水イボや扁平イボを作る
・性器が良性のHPVに感染:尖圭コンジローマになる
・子宮頸部が悪性のHPVに感染:子宮頸がんの原因となる病変を作る
HPVは小さな傷を通して皮膚や粘膜に入り込みます。そしてやや深いところ(基底細胞)にたどり着いたウイルスが細胞分裂を暴走させ、その部分がもり上がってイボになるのです。
引っ搔き傷のできやすい手足や、性行為で傷つきやすい性器の粘膜はHPVにとって狙い所です。免疫が弱った隙をついて入り込み居着いてしまいます。
良性の場合、ある程度で細胞分裂の暴走はストップするようです。しかし悪性のものは長い時間をかけて細胞の遺伝子にまで影響を及ぼしガン化させていきます。
なかなかインパクトのある形のイボを作ってくれる性感染症の尖圭コンジローマもHPVが原因ですが、こちらは抗ウイルス薬を塗ったり、液体窒素で外科的に取り除く治療法が主流です。ただしどちらの治療でもすぐに再発してしまったものがヨクイニンの服用で治まったという報告もあります。
手足にできるイボも、良性のものは切除するのが一番手っ取り早いのですが、繰り返しできてしまうようなら免疫力を低下させない方法を考えたり、免疫に悪影響を及ぼしている他の病気がないか調べた方がいいでしょう。
HPVと子宮頸がんの関係は少々複雑です。
感染したからといって一足飛びにがんになるわけではありません。長い時間をかけて一部の人だけが最終的にがんになります。(上図参照)
HPVには女性の80%が感染しますが、その90%で免疫によりHPVは撃退され一過性の感染で終わります。残りの10%前後の人が、HPVに感染し続けることで表皮の細胞に異変が起こり「病変(異形成)」が生じます。
この「病変」というのはウイルス感染で子宮頸部に扁平タイプのイボができている状態と言えます。まだがんではありません。
さすがに高度病変(HSIL)になると、がん化する前に外科的に病変を切除しますが、軽度の場合は定期的な経過観察だけで、特別な治療はしないのが現状です。自身の免疫力で回復し、次に検査したら異常なしになっていたという方も結構おられます。
このことから子宮がん検診の効果を疑問視したり、かえって不安をあおるだけなどと書かれた書物もみかけますが、それはちょっとずれた意見でしょう。自分の状態を正しく把握するのは健康管理をする上で重要です。気づかないまま放置して手遅れになることが何より一番良くありません。
子宮がん検診の細胞診結果が全くの異常なしであればよいのですが、ASC-US(軽度病変の疑い)とかLSIL(軽度病変)であると診断されたら、たとえ「まだがんではなくてイボのような物」と言われても不安になってしまいますよね。健康管理をして免疫力を高めるような食生活を心がけることに加えて、もう少し積極的なアプローチを希望される患者様に、当院ではこのヨクイニンの内服をお薦めしています。
医療現場から「軽度の病変が正常に戻った」との報告があがっていること(当院でも効果のあった症例があります)、効果に個人差はあっても悪化したという例はまだ見当たらないことに加え、副作用の心配がほとんどないこともお薦めできる理由です。
ここからは、ヨクイニンの具体的な効果やどういう仕組みでその効果がでるのかを見ていきます。
ヨクイニンの代表的な薬効は次のとおり。
・免疫を活性化しウイルスを撃退する作用
・皮膚の新陳代謝を促す作用
・体内の余分な水分を排出する作用
具体的に見ていきましょう。
体内のある種の免疫細胞を増やす効果は確かなようです。抗ウイルス薬のように、特定のウイルス複製の仕組みを阻害して狙い撃ちするわけではなく、ヒト自らに備わっている免疫機能を後押ししてくれるということです。
皮膚の細胞は日々生まれ変わっています。新しく生まれた細胞は古い細胞を押し出し、それといっしょに体に取ってよくない物もどんどん外に捨ててくれるのです。ヨクイニンは、この皮膚細胞の生まれ変わる働き(ターンオーバー)を活性化することも知られています。
表層の浅い部分にできているシミやブツブツならターンオーバーで下から押し上げられて、いずれはアカと一緒に消えてくれることもありえます。最初にウイルス性以外のイボでも効かないとは言い切れないと書いた理由はこれです。
これを利水作用と言いますが、肝臓や腎臓を助けよくない物を体の外に出してくれます。水分が出て行ったら皮膚がサカサカになるような気がしますが、むしろ逆でアトピー性皮膚炎にも効果が出ているという報告があります。体の水分が正しい場所に収まるように働き、むくみは取れても肌には保湿とバリアーをもたらしてくれます。
これらの効用を総合的に判断すると、ウイルスが原因で皮膚に異常が生じた場合の治療にぴったりであることがわかります。
では、ヨクイニンに含まれるなんという物質が体内でどういう化学作用をおこしているのか、といった分子レベルの仕組み(薬理学では作用機序といいます)はどうかというと、これが実はよくわかっていないのです。効果の正体は「コイクノライド(Coixenolide)」という物質であると書いた論文も散見されますが、確かではないようです。
漢方薬は、アミノ酸やタンパク質などいくつもの成分が相互作用で織りなす効果であり「食」に近いものなのです。
結局のところ、HPV感染者の誰にでも絶対に効果があるとは言いきれず、選択肢の一つとしてのヨクイニンではありますが、お肌がきれいになりお化粧乗りがよくなって嬉しくない女性はいないはずです。気分があがれば免疫機能も高まり、より健康できれいになっていきます。これこそがヨクイニンパワーなのかもしれません。
昔からヨクイニンは漢方において、妊婦は使用を控えた方がよいと言われています。女性の方は医師と良く相談して処方していただいてください。