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スタッフコラム

Staff Column

子宮頸がんに関する疑問に、精一杯お答えします

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今までの子宮頸がんシリーズの集大成として、患者様によく聞かれる事項をまとめてみました。噂の真相や正解の無い難問にも挑んでみましたので、参考にしてみてください。

日本では本当に子宮頸がんが増加しているの?

罹患者数と死亡者数の推移

上のグラフを見る限り、上皮内がん(がんが基底膜の上部にとどまっている場合)も含めると、明らかにうなぎ上りに見えます。これは定期検診がある程度普及し、自覚症状が無くても発見できたために増えた可能性がありますが、浸潤がんの方もジワジワと増えているようです。
いずれにしても他のがんが横ばいや低下をたどっていることを考慮すると、発症も死亡も子宮頸がんだけが増加しているのは統計からも事実のようです(統計そのものが信頼できればですが)。

ことさらに脅威を強調するつもりはありませんが、本来なら他のがんと違って予防ができるはずなのにこの結果とは悲しい限りです。
やっと始まったワクチン接種も、副反応報道で「積極的な接種勧奨の一時差し控え*」になってしまいました。このほんのわずかな期間の予防接種実施の効果が、どのようにデータに出てくるかは2020年以降を待たねばなりませんが、日本が「子宮頸がん予防後進国」であることに変わりはなく、検診は最後の砦だということです。
*平成25年6月14日 厚生労働省決定

子宮頸がん発症の低年齢化も問題です

あまりにも古いデータをみても仕方がないのでここ20年に絞って比較しましたが、確かに子宮頸癌がんの発症は低年齢化しています。
原因として、セクシャルデビュー(初体験)の低年齢化がよく言われています。HPVに感染してからがんになるまでは10〜20年かかりますが、感染した年齢が若すぎると免疫は万全じゃないけれど細胞分裂は盛んであるという条件が、がんの発症を早めることも考えられます。

現在、子宮頸がんを発症するピーク年齢は30代半ばから40代半ばで、これは女性にとって仕事・家庭・育児と最も忙しい時期に当たります。
忙しさにかまけてついつい自身の健康管理をなおざりにしたり、健康診断をパスしてしまうことが発見の遅れにつながっているのです。女性に多くの負担を強いる現代社会のストレスは、免疫力の低下も招いているのかもしれません。

一方、現在は出産年齢がどんどん高齢化しているので、なんとこの二つの時期も重なってしまう事態となっているわけです。妊娠相談にみえた患者さんから子宮頸がんがみつかったなんていったいどうお伝えすればいいんでしょう?本当に辛いです。

とにかく、女性に一番輝いていて欲しい年代を直撃するこの病気をこのまま放置しておく訳にはいきません。やはり検診の受診率アップは必須です。

性体験が多い人が子宮頸がんになりやすい、は間違いです!

性体験が多いと、HPV感染のリスクは増えます

まったくセックスをしなければHPVには感染しませんので子宮頸がんにもなりませんが、それでは全然解決になりません。子宮頸がん云々より先に人類が滅亡しちゃいますから。たぶん。
確かに性体験が多ければHPVに感染する機会は増えます。性行為はHPVを子宮頸部に最も効率よく送り届ける方法ではありますが、性行為だけが感染ルートとも言い切れませんし、子宮頸部以外の部分にも感染することがあります。
ここまでは、HPVに感染する機会が多いか少ないかの話。とは言え結果的にほとんどの人が何らかの型のHPVに感染するのですから、論じてもあまり意味はないですね。

感染することとがんになることは別問題です

子宮頸がんになりやすいかどうかはその人の免疫力に負うところが大きいのです。数十回感染して数十回撃退できる人もいれば(HPV撃退以前に他の感染症にノックアウトされる可能性大だけど)、たった一度の感染からガンになってしまう方もおられます。
いわゆる「検診でひっかかる」人の中には、細菌による炎症がひどいために正しい判別ができなかったり、性感染症が発覚する方もいます。こういう事例があってSTD(性感染症)と検査方法が似ていることも子宮頸がんに対する誤解を生む要因になっているのかもしれません。

ですから検診で一過性の感染が見つかっても卑下する必要は全くありません。たまたま免疫力が低下していたので潜伏していたHPVが活性化しただけかもしれないのです。HPVは長期間の潜伏や持続感染のできるウイルスですから、感染ルートや犯人探しも無意味です。なによりもくよくよ悩んでストレスをためることは免疫力を下げる要因になりますからやめましょう。
「子宮頸がん原因」とググると「やりすぎ」なんてひどい関連キーワードが出てこなくなるように、正しい知識を身につけて広めてくださるようにお願いします。

HPVに一度感染して回復すればもう感染しない?

免疫には種類があります

挙動不審の病原体が体に入ってくると、まずは地元のお巡りさん(自然免疫:マクロファージや好中球など)が寄ってきます。「キミ、なにやってるの?ちょっとこっち来て」といった具合に逮捕されて終わりです。ほとんどのケースはこれで事なきを得ます。
ウイルスのように血液に入って活動地域を広げたり細胞への押し込み強盗をするような凶悪犯の場合は、捜査本部が立ち上がり(抗体が作られて)指名手配されることになります。刑事さんたち(B細胞・T細胞などのリンパ球)が活躍してくれるのです。一度指名手配されればその後はブラックリストに載るので次の侵入はほとんどうまく行きません。これを獲得免疫と言い、風疹などは生涯にわたって効果があることはご存知と思います。

抗体が作られにくいHPV

ところが、HPVは正体がバレないようにものすごくうまく立ち回るのです。家族のような顔をして細胞に居座り、子宮頸部からむやみに移動(血液に侵入)することもありませんから「広域指定事件」に認定されず、抗体が作られないのです。地元のお巡りさん職質だけが頼りですが、家宅侵入せずに(細胞に入れずに)ウロウロしている間じゃないと見つけられません。
全く抗体が作られないという訳ではないので、免疫対応はある程度早くなるというものの、同じHPVに何度でも感染しますしHPVの型が異なればその都度新しいウイルスとして感染してしまいます。

HPVはどうして血液検査できないの?

B型肝炎もヘルペスも、血液中の抗原と抗体の両方を調べることにより、ウイルスに感染しているか、今までに感染したことがあるか、現在炎症をおこしている(活動中)か、などが分かります。
しかしHPVは血液に侵入せず、それによって血液中に抗体が作られにくいので血液検査で調べることができないのです。患部から直接検体を採取しなくてはならず、検査のハードルを上げているのはなんとも悩ましいところです。

HPVは抗体が作られにくいからこそ、ワクチンという手配写真で予め犯人の顔を覚えておくことが重要になります。強盗犯が宅配を装ってやって来ても、指名手配で写真を見ていたらドアを開けずにすぐに警察呼べますよね。家に上がり込まれる前に撃退することができるのです。

HPVキャリアであることをパートナーに伝えるべきでしょうか?

患者様からお尋ねをうけることが非常に多い質問ですが、正解のない質問でもあります。
感染率だけで言えば女性より男性の方が高い(90%:アメリカCDCデータ)のですが、男性には子宮頸部はありませんし、HPVが関与する男性のがんは非常にまれです。というわけで、まずお相手に対しての罪悪感や心配は不要ですし、セックスを避ける理由も必要もありません。
その上で伝えるかどうかはあくまであなたの自由意志ですが、相手をよく見極めた上でご自身を苦しめるような結果を招くことだけは避けてください。

伝えても良い相手・悪い相手

お相手がHPVと子宮頸癌の関わりについてよく理解できる知能があり、その上でお互いを思いやることができるようなパートナーなら最高です。愛煙家であればこれを機に禁煙してもらったり、免疫力アップのために一緒に食生活を見直したりするのも良いでしょう。そうしている間にきっとHPVのほうが居場所をなくして去って行くはずです。

一方で、頭では理解しても嫌悪感や偏見が捨てられないという人が、高めの知能や社会的地位を持っている人の中にも一定数います。失言を繰り返す政治家や差別主義者なんかが典型的なこのタイプですね。本音と建前が違うので建前の方を信じて打ち明けると不快な態度に豹変するかもしれません。
いわゆるモラハラ男にも伝えるのはやめましょう。あなたを虐待し支配するための材料を自ら提供するようなものです。責められていると思い込んで逆ギレする可能性もあります。
もし、あなたも同じような考えを植え付けられているとしたら、今あなたは不要な罪悪感との葛藤の真っ最中かもしれません。でも一番大切なのは自分自身なのです。黙って自己の利益と心の平穏、そして治療に集中しましょう。

あなたのパートナーが、あなたと同じ価値観をもつ信頼できるお相手であることを祈っています。

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