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関節リウマチに代表され、なぜか女性に多い膠原(こうげん)病。たまたま話題にしている時に、知人に「膠原っていったい何?」と聞かれたので「コラーゲンのことだよ」と答えたところ想像以上に驚かれてしまいました。
どうやらコラーゲンと聞くと美容サプリメントのイメージばかりが先行するようです。そこで今回はコラーゲンの「そもそも話」です。
膠原病を見いだしたのはアメリカの病理学者であるポール・クレンペラー氏(Klemperer Paul 1887-1964)です。原因不明であったこの症例の共通点が結合組織コラーゲンの変性(繊維が崩れてガラスのようになってしまう)であったことからcollagen-vascular diseaseと名付けたのです。
この病気が命名された当初は、コラーゲンそのものに対する日本語が無かったのでおそらくその音に似せて「こうげん」とし、ゼラチン=膠(にかわ)の原料という意味の「膠原」という字を宛てたのでしょう。日本語にはカタカナがあるので外来語を取り込みやすいと言われていますが、少し昔までは、似たような音の漢字を宛てたりしてせっせと翻訳していたのです。膠の文字は常用漢字ではないのであまり見かけませんが「膠着状態」など、くっついて離れない意味に使いますね。
というわけで、コラーゲンの日本語は「膠原」となります。
当初は結合組織のコラーゲンの変性がその本質だと考えられた膠原病ですが、研究が進むにつれ、免疫のシステムが異常を来たし、自分自身の組織を病原菌と間違えて攻撃してしまうために体のあちこちで炎症がおきるという病気のメカニズムが解ってきました。結合組織のコラーゲン変性はその一つの結果だったわけです。
判明した事柄や複雑に重なった症状から考えて、もはや膠原病という病名でひとくくりにするのはふさわしくないのですが、一般的に浸透してるため使い続けられているのです。
「膠原」自体はなかなかの名訳にもかかわらず、ちょっと字が難しかったせいでしょうか?一般的には別ルートの美容やアンチエイジング科学から入ってきた「コラーゲン」というカタカナ単語に地位を奪われてしまったようです。
ここからはコラーゲンという物質そのものについて見ていきます。
分子です。ってこれでは答えになりません。コラーゲンはズバリ、タンパク質の一種です。タンパク質とはアミノ酸の集合体で、人の体を作る最重要物質なのはいうまでもありませんが、その種類は何万種類にも及びます。
アミノ酸をレゴのブロックやパーツと考えると、でき上がったお城や自動車がタンパク質といった感じ。目的に応じていろいろな形に組み上がるし分解もできますが、とてもたくさんのアミノ酸部品が組み合わされているのでタンパク質は概ねすごく分子が大きいのです(高分子量)。コラーゲン自体にも多くの種類があります。
荷造りを思い出してください。中の品物が動いたりこわれたりしないように、接着テープで固定したりフカフカの梱包材を入れますよね。人間の体も同じです。と言っても臓器どうしの話ではなく、より微細な細胞レベルの話ですが、細胞と細胞の間は基質(マトリックス)と呼ばれる結合組織で充填されているのです。コラーゲンはそこにあります。
結合組織の中ではとてもたくさんのコラーゲン分子が寄り集まって繊維の束のような形を作っており、特に真皮・腱・骨・軟骨の細胞間の大切な構成要素になっています。人間では全タンパク質のほぼ3割がコラーゲンです。
繊維状に組み上げられたのその形にヒントがあります。弾力と強度を兼ね備えたコラーゲンの繊維は細胞の間に敷き詰められたショックアブソーバー(緩衝材)なのです。
体の運動系においては筋肉・腱・骨へと衝撃を和らげながらスムースな力の流れをサポートし、皮膚にはハリと弾力を与えてくれます。この「ハリと弾力」が女性たちをコラーゲン入りサプリメントや化粧品にに引きつけるキーワードです。
上の図は、お肌説明の鉄板「皮膚断面模式図」です。表皮シーツの下に真皮マットレスを敷いている感じです。真皮マットレスの中を縦横無尽に埋め尽くし、エラスチンという物質で束ね支えられたコラーゲン繊維はまさにスプリング、弾力の源です。
さらに回りには水分を大量にがっちりつかんだヒアルロン酸を従え「ハリと弾力」と並び称されるあの「みずみずしさ」をお肌に与えているのです。しかもこのコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸の3点セットを生成してくれる繊維芽細胞という自動再生装置もついています。
ただし、この自動再生装置は歳とともに衰えていきます。20代の頃はふかふかのマットレスの上にピーンと敷かれたシーツのようだったのに、悲しいけれど歳を重ねていくうちにヘタレたマットレスとしわしわシーツになってしまうわけです。
コラーゲンを食べても塗っても、いきなり結合組織内のコラーゲンが増えたり、摂取した物に取って代わったりすることはまずありません。
なんだかこれを聞いただけでも、サプリや化粧品はあまり意味が無い感じがしますよね。そのとおり、ほとんどがゼラチンを食べているのと変わりません。せいぜいアミノ酸の補給や肌の保湿になるのが関の山といったところです。
結局、組織の中でコラーゲンを生成している繊維芽細胞にがんばってもらうしかないのです。もしも体内のコラーゲンを真新しい正常な状態に復元できる夢の新薬が開発されたら、美容のためではなく、まずはコラーゲンが変性してしまう膠原病にこそその恩恵は与えられるべきですね。