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今年(2018年)インフルエンザ患者数の指標*が1999年に統計を取り始めて以来最多を更新し続けています。これはもう大流行と言ってよいレベルです。
いつも寒い時期になると不安と悩みのタネになるこのインフルエンザ、ニュースで流れてくるのは増える患者数と、手洗いのススメばかり。ちょっと詳しい情報でもA型・B型だの、H1N1だのめんどくさそうな内容です。
しかも、せっかく受けた予防接種なのに回りから「そんなに効果無いよ」と言われる始末。いったいどうしろというのでしょう?
というわけで、いろいろなもやもやを解消するべく今回はインフルエンザにズームアップ。敵を知れば百戦危うからず、ですからね。
*)1週間の間に医療機関から報告された患者の平均数
ワクチンがどうやって作られるかを知るためには、まずインフルエンザウイルスの構造と種類を理解する必要があります。
インフルエンザウイルスは、自分自身の設計図をタンパク質の膜でくるみ、その外側表面にトゲトゲしく糖タンパクを生やした姿をしています。このトゲトゲを感染相手の細胞にひっかけて取り付く、ミクロの「ひっつき虫」なのですが、このウイルスの持つ表面の糖タンパクは、私たちの免疫システムが自分の細胞かそうでないかを見分ける重要な目印になることを覚えておいてください。
インフルエンザウイルスは、まず膜タンパク質の種類によって大きくA、B、C型の3つに分類されます。そのうちA型は、表面にある2種類の糖タンパク、HA(ヘマグルチニン)とNA(ノイラミニダーゼ)の種類によってさらに細かく分類されます。これを亜種といいます。H1N1やH2N3とはHA(ヘマグルチニン)とNA(ノイラミニダーゼ)の頭文字と種類番号なのです。
ちなみに、HAは16種類、NAは9種類見つかっているので、理論上は144パターン亜種が存在することになります。B型やC型はこの亜型が1つしかありません。
先ほど、この糖タンパクが免疫システムにとっての目印になると説明しましたが、そうなんです。これが違うと同じインフルエンザA型でも、免疫にとっては全く別物ということになるのです。
A型亜種144種類のインフルエンザワクチンを全部用意しておけというのは、いくらなんでも無茶ぶりというもの。ワクチンを作るには結構な量のウイルスが必要ですからせっせと培養しなくてはなりません。インフルエンザワクチン作りは鶏の有精卵の中でウイルスを培養することから始まる手間と時間のかかる作業です。
そこでしょっちゅう流行を引き起こすおなじみウイルスを「株」として保存しておき、その年の冬に流行しそうなものを選んで、暖かい頃から準備を始めるのです。
いったいどういう人たちがその株を選んでいるのでしょうか?
国立感染症研究所というところが、厚生労働省の依頼で『インフルエンザワクチン株選定のための検討会議』というものを毎年開催しています。どういう理由でどの株に決まったかは国立感染症研究所のウェブサイトに逐一報告が出ますから、見てみるのも面白いかもしれません。
このように、そのシーズンに流行が予想されるインフルエンザの中からA型とB型、各1〜2種類をミックスしたのが現在のインフルエンザワクチンです。C型は大流行はおこさないのでワクチンには含まれません。
ワクチンの中身は、自分を増やす力を失った(不活化した)ウイルスです。言ってみれば手配写真とプロフィールみたいなもので「こういうヤツが体に入ってきたら攻撃してください」と免疫に知らせるだけのものです。
それを見て免疫細胞は訓練を始め、攻撃部隊の編成、つまり抗体を作りはじめます。新米兵士には繰り返し教える必要があったり、部隊が編成されるまでに時間がかかるために、子供には2回接種したり、流行する前に早めに接種を済ませなくてはいけないのです。
もし予想がはずれたら、ワクチンは役に立ちません。準備された攻撃部隊はワクチンのウイルス専用なので、同じA型インフルエンザでも糖タンパクの型が違ったら無視します。臨機応変とか忖度とかそういったものは抗体には全くありませんので、あしからず。
でも全部はずれることはめったにありません。100%とはいかなくとも結構当たりますので安心してください。B型は変異しにくいですし、A型にしてもHAかNAのどちらかでも型が合っていればある程度の効果はあるようです。
A型には、人間以外にもカモやニワトリ、ブタなどが感染しウイルスの拡散に一役買っています。こういう種を渡り歩くウイルスは非常に厄介です。いろいろな動物の体内で混ぜあわされて変異し、ある日誰も感染したことの無いインフルエンザが生まれることもあるからです。誰一人免疫をもっていなければ、世界的な大流行(パンデミック)になる可能性は飛躍的に高まります。
ウイルスは日々変異する可能性があり、かといってワクチン準備には時間がかかるし、接種してから抗体ができるのにも時間がかかる。しかもワクチンの効果は持って半年ほどと限界がある。 これが私たちが毎年のようにインフルエンザに悩まされ、かつ新型インフルエンザの登場に脅えている所以なのです。
インフルエンザウイルスに出会わなければよいのです。でも、流行すればするぼどお会いする機会はどんどん増えるし、だからといって家に引きこもっている訳にもいきません。 手洗いや消毒の方法については、情報はあふれていますから厚生労働省のマメゾウくんにでも聞いてください。
ただ、漠然とダラダラ予防するより、ウイルスが回りにいそうな時に集中的に除去対策をするのが効果的です。やみくもに手を洗い続けては皮膚のバリアー機能を損なって逆に危険ですし、感染者が誰もいない場所でむやみに換気をしても、寒くて風邪をひくだけですから。
・体の表面にくっついても、体の穴(目・鼻・口)には入れないこと
・ウイルスはわりともろい。アルコール、石けん、熱は効果絶大
・ウイルスの体外での寿命はせいぜい半日。いなくなったら一安心
予防接種をしても感染しない訳ではありません。不用意にウイルスを体内に迎え入れれば、本来はウイルスがいてはならない場所(血液中や細胞の中など)に潜り込まれてしまう可能性大です。
ウイルスの目的はただ一つ、自分自身のコピーを作ることです。私たちの細胞に侵入し、その細胞を手下や部品のように使って数を増やしていきます。乗っ取られた細胞は本来の自分の仕事ができなくなるだけでなく、最後には死んでしまいます。
しかし、予防接種によって予め抗体という専用武器(しかも飛び道具!)を持った攻撃部隊が待ち構えていますから、当然ウイルスの方が分が悪くなります。いわゆる水際作戦ですね。ここで細胞に侵入される前に撃退に成功すれば、「ちょっと熱っぽかったかな」くらいで終わってしまうでしょう。(予防接種効果その1)
型や種類によって一概には言えませんが、この水際作戦の趨勢が決まるまでに1〜5日かかります。いわゆる潜伏期間です。
ここで気をつけていただきたいのは発症せずともその間ずっとウイルスをまき散らしているということなのです。特にウイルスお持ち帰りの機会が多いお父さん!家族にうつさないよう、くれぐれも気をつけてください。
運悪く、ウイルスの方が攻勢に転じて細胞侵略されてしまったら大変です。細胞内に立てこもられては、もはや飛び道具(抗体)は通用しないので、T細胞という免疫SWAT部隊が出てきて細胞ごとぶっ飛ばしてくれます。人質細胞は見殺しですが、生かしておいて大量のウイルスが出てくることになればその方が被害が大きいので「小の虫を殺して大の虫を生かす」戦略なのです。
免疫が本気モードになるこのあたりから、主であるはずの私たちの方も結構しんどくなります。免疫がもっと活性化するように体温があがったり(発熱)、免疫戦士に指令を与えるために分泌される物質が、神経や筋肉に痛みを引き起こしたりと、あの魔の1週間がやってくるのです。
ウイルスが増えるのを妨げる薬もありますが、ウイルスを駆逐出来るかは自分の免疫だけが頼りです。免疫がその力を最大限発揮してくれるように安静にしているほかなす術はありません。
それでも予防接種を受けていれば、全く無防備なままウイルスに攻め込まれて、あっという間に体中を占領されてしまうよりは、はるかにましな戦いができるので、別の感染症を併発したり、私たち自身の体力が尽きてしまったりすることは避けられます。(予防接種効果その2)
1.なにはともあれ感染しない(消毒・手洗い・換気)
2.感染しても発症させない(体調管理・予防接種効果その1)
3.発症しても重症化させない(医者・薬・予防接種効果その2)
・+α:感染したら絶対に拡散しない(マスク・外出禁止)
ことインフルエンザに関してはワクチンを過信するのは禁物です。かといって役に立たないというのも噓です。
自分の体調を基本にウイルスの危険度、流行予想などを考慮して、予防接種を受けるかどうかは自分自身で判断してください。予防接種を受けた後も、流行予想の的中度もチェックして感染予防は怠らないようにお願いします。