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スタッフコラム

Staff Column

脂質と女性ホルモンの深い関係・中性脂肪編

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女性ホルモンであるエストロゲンが減少すると、LDLコレステロール(悪玉)が増えてくることは前回説明しましたが、中性脂肪の増加も更年期女性にとっては同じくらい深刻な問題です。

中性脂肪(トリグリセリド)とは人間の保存用燃料です。人間は食べるそばからエネルギーに変えて消費しますが、余るとこの中性脂肪の形にして取っておき、必要な時に分解して使います。
エネルギー収支が大幅黒字になると、皮下や内蔵の細胞に蓄えられて保温や衝撃吸収クッションなんかも兼ねてくれます。でも蓄えすぎると…そう、肥満への扉が開かれるのです。

更年期のジワジワ太り、その原因

更年期は、女性にとって思春期や産後以上に肥満になりやすい時期と言われています。主な原因を見てみましょう。
・年齢による基礎代謝量の低下
・運動をしないことによる悪循環(筋肉量の減少と消費エネルギーの低下)
・ホルモンバランスや自律神経の乱れ
・ストレスによる過食
・女性やめてもいいか、というあきらめ
あれやこれやで、使うエネルギーより入ってくるエネルギーの方が増えていきます。もちろん、要は食べ過ぎなければよいわけですが、放っておいても太る要因が増える更年期以降は、今まで以上にこのコントロールがシビアになってくるのです。

まずは、BMIで自分の現状を知り、自分に必要なエネルギーや運動量を把握して、肥満になってしまう前に踏みとどまるのが肝要です。いつまでも美しい女性でいようという気持ちをモチベーションにがんばりましょう。

肥満、その脂肪の蓄え方について

皮下脂肪と内臓脂肪

脂肪には蓄えられる場所によって「皮下脂肪」と「内臓脂肪」に分けられるのは有名です。

お尻と太ももの境界線をなくすダヨダヨとか、二の腕の振り袖などの「つかめる脂肪」が皮下脂肪です。筋肉が減るに従ってだらしな〜くなってくるのがなんともいやらしい。ただ、その程度なら崩れているといえどもかすかにボン・キュッ・ボンの名残りはあります。
俗に洋梨型とかぽっちゃり型といわれる肥満体型です。落としにくいのも特徴ですが、見た目さえ気にしなければ、寒さにも強くなるしサバイバルに役立つ…かもしれません。男性目線で許容されたり好まれたりするのも、どうやらこちらのタイプのようです。

一方、内臓脂肪は内蔵器官の間を埋めるようにつくので、おへそを中心とした胴回りが太くなりリンゴ型の肥満になります。男性に多く、一日に最低でも1回はトクホ商品の広告などでお目にかかるあの突き出し腹が目印です。そして、この内臓脂肪こそが生活習慣病の元凶と言われているのです。

「くびれ」よさらば

なぜ、男性に比べて女性はリンゴ型の肥満が少ないのでしょうか?ここにも女性ホルモン「エストロゲン」が関与していました。エストロゲンには「内臓脂肪」の代謝を促し、蓄えにくくする働きもあったのです。
しかし、更年期以降は、予備タンクのフタを開けてくれる親切なエストロゲンの恩恵は期待できません。閉経後にじわじわとウエストのくびれが無くなってきたら「内臓脂肪」がついてきた証拠、今までとは違う悪質な肥満になる可能性もあると思ってください。

体についた脂肪の正体

さて、今度はその脂肪の中をズームアップしてみましょう。プックプクに膨らんだイクラのようなものが所狭しと詰まっているのが見えてきます。これが白色脂肪細胞です。脂肪を語るにあたっては、この白色脂肪細胞を無視するわけにはいきません。

エネルギーとして使われずに余ったまま血液中を流れている中性脂肪は、この白色脂肪細胞にどんどん取り込まれていきます。脂肪を取り込んだ白色脂肪細胞は、どんどん膨らんで細胞自体が倍くらいの大きさになります。脂肪を分解排出して小さくなっても、再び蓄えて成熟・膨張し、これを繰り返しながら結構長生きする(約10年)丈夫な細胞です。
しかも、溜め込む余裕がなくなると、数を増やして更に取り込もうとするらしいのです。人間の肥満の可能性は無限大?!(でも試さないでください。お願いします。)

たまった脂肪は何をしているのか?

いろいろな「何か」を出しているらしい

いつか来る飢餓に備えてひたすら出番待ちをしている、というわけではなさそうです。

昔から脂肪と女性ホルモン「エストロゲン」に関係があることは知られていました。拒食症や極端なダイエットで体脂肪が足りなくなると生理が止まってしまったり、逆に男性でも太りすぎると女性のように胸が膨らんだりするからです。「このおすもうさん、ブラジャーした方がいいんじゃない?」と思うこと、たまにありますよね。(無いよ!)

主に卵巣で作られているはずのエストロゲンがなぜ男性にまで?と思ったら、なんと脂肪細胞が副腎皮質から分泌された男性ホルモン(アンドロゲン)をもとにしてエストロゲンを作っていたのです。そして、エストロゲン以外にもさまざまなものを分泌していることが分かってきました。

アディポサイトカインを知ろう

脂肪細胞が分泌されるいろいろな因子の総称を「アディポサイトカイン」といいます。脂肪のことを英語でアディポといいますが、そこからでてくるサイトカイン(細胞から分泌される、なんらかの役割を持ったタンパク質因子のこと)という意味です。

アディポサイトカインには人間の体にとって良い働きをする因子と、結果的に良くない状態をまねく因子があります。ここにも善玉・悪玉がいたというわけです。以下は代表的なアディポサイトカインとその働きです。

善玉 アディポネクチン 糖尿病や動脈硬化を抑える
レプチン 食欲を抑える
悪玉 PAI-1 血栓を作りやすくする
TNF-α インスリンの働きを妨げる
MCP-1 インスリンの働きを妨げる

ちなみにレプチンは、発見当時「夢の痩せホルモンか!?」と騒がれたこともあり、ご記憶の方もいらっしゃると思います。その後肥満したあとに合成レプチンを摂取しても効果がないことがわかりました。やせ薬は実現しなかったのです。

肥満で脂肪細胞が不良化!?

肥満であまりにも出番がないせいでしょうか?肥大化して数を増やした脂肪細胞たちは不良化して(グレて?)分泌するアディポサイトカインのバランスを変え始めます。しかも理由はよくわからないのですが、善玉の因子は減り、悪玉の因子ばかりが増えていくのです。

内臓脂肪でこの不良化が起こると、肝臓などの重要器官に直結しているだけに事は深刻です。代謝機能に影響を及ぼして、糖尿病、高血圧症、動脈硬化などの生活習慣病へと移行していきます。さらに、内臓脂肪だけが分泌する悪玉因子も見つかっており、内臓脂肪を溜め込むことの危険が強調されるのはこういった理由からです。

アディポサイトカインと生活習慣病の関係はまだまだ研究途上にあるので、これからもっといろいろなことが分かってくるのではないでしょうか。

エストロゲンの功罪

あれ?エストロゲンが減って内蔵脂肪が増えてしまうけど、でもその脂肪がエストロゲンを出してくれるんだよね。う〜ん、ややこしいですね。
それなら相殺してちょうど良くなるのかとも思えますが、なかなかそう都合よくはいかないようです。

乳がん発症年齢のツインピークス

乳がんとエストロゲンの関係はとても密接です。

乳がんの発症率は一生に浴びるエストロゲンの量と比例しています。エストロゲンの分泌量は30代が最高なので、40代の後半までにはほぼ一生分のエストロゲンを浴びてしまい、その帰結として40代後半が乳がん発症の最初のピークになります。
その後エストロゲンの分泌量は下がる一方なので閉経後50代で一旦は下がるものの、肥満で蓄えられた脂肪によって生み出されるエストロゲンに暴露され続け、60代を超えてまたピークが現れると考えられます。

これまで見てきたアディポサイトカインの異常も、がんの発症に一役買っているかもしれません。閉経後の肥満は、乳がんの確定リスクなのです。

終わりに

しかし、卵巣ができなくなったエストロゲンの生産を、脂肪が肩代わりしてくれているとは、人体のレジリエンスには全く驚かされます。乳がんの危険因子とは言えエストロゲンの恩恵は絶大なので、オバちゃんは小太りくらいが調子いいといった伝説(?)はあながち噓ではないかもしれません。

しかし、やはり度を超した肥満は百害あって一利無しです。バランスのよい食事と運動で適正体重を維持することを、どうかあきらめないでください。後ろめたさに苛まれながら食べるスイーツはちっとも美味しくありませんからね。

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