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最低限これだけは覚えておきたい!漢方薬の副作用

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効果のあるお薬には必ず副作用があります。漢方薬だって例外ではありません。
現在では、漢方薬に含まれるどの生薬のなんという成分がこういう仕組みで作用する、と明らかになっているものもありますが、未だに良く分からないものも多く、こうすれば絶対に大丈夫と言い切れないのも漢方薬の悩ましいところです。
というわけで今回は文字通り「毒にも薬にもなる」生薬のお話です。

 

副作用の常連容疑者たち

薬の副作用と思われる症状が出た場合、通常の薬は単独犯なので犯行を特定しやすいのですが、漢方薬の場合必ず徒党を組んで役割分担している(複数生薬が配合されている)ので犯行の全貌をつかむのが少々厄介です。
しかし漢方薬の副作用事件が起きると、一味(漢方処方)の中に必ずといっていいほど加担しているおなじみの容疑者がいます。まずはこれらの犯行の手口が解っている生薬たちからご紹介しましょう。

甘草(カンゾウ):表と裏の顔を持つ漢方界のドン

・容疑:偽アルドステロン症を引き起こした罪

・凶器:グルチルリチン酸
その名の通り甘い味のする甘草は、抗炎症作用・鎮痛作用・解毒など多くの効果があり、漢方処方の7割以上に含まれている生薬の王様といえる存在です。しかし、多量に摂取し続けると「偽アルドステロン症」と呼ばれる症状を引き起こします。

副腎から分泌される「アルドステロン」は、体内に塩分と水をためてカリウムの排泄をうながし、血圧を上昇させるホルモンです。アルドステロンが過剰に分泌されると、高血圧、むくみ、低カリウム状態などを引き起こします。これを「アルドステロン症」と言います。
偽アルドステロン症は、血中のアルドステロンが増えていないのにアルドステロン症の症状を示す病気で、甘草の主成分である「グルチルリチン酸」が作用することで起きることが分かっています。

初期症状は、手足のしびれやつっぱり感・脱力感で、その他全身の倦怠感、むくみ、口渇、食欲不振などが現れます。

そのため、甘草は1日の摂取量を把握することが必要なのですが、多数の処方に含まれていることに加えて、グルチルリチン酸を甘味量として含む食品などもあることから、気づかぬ間に多く摂取してしまうことがあるのです。
あなたが小柄で体重も軽いタイプの高齢女性で心臓の働きも弱ってきている場合、甘草を含む漢方薬の長期服用には特に注意が必要であることは覚えておいてください。

麻黄(マオウ):危険な香りが魅力の洗脳者

・容疑:スポーツ選手のドーピング検査を陽性にした罪
・凶器:エフェドリン

ダイエットに興味のある方なら「エフェドリン」の名前は一度は聞いたことがあるのではありませんか? 麻黄の学名がエフェドラであることからもわかるように、このエフェドリンは麻黄から発見・抽出された物質です。中枢神経や自律神経(交感神経)系に作用して活発化させるので、適切に使用すれば様々な良い効果をもたらしてくれます。

新陳代謝を活発にして(脂肪燃焼効果)体を温めたり、気管支を広げて咳を鎮めたり、頭をスッキリさせて集中力を高める効果もあります。大量に摂取するとアドレナリンがウハウハ出るような興奮状態を擬似的に作り出せるので、古代の宗教儀式などでハイになるために使っていたのもこの「麻黄」だったのではないかと言われています。
従って、エフェドリンが一定濃度以上検出されれば(それが風邪気味で葛根湯を飲んだだけだとしても)ドーピングしたと見なされるわけです。

麻黄の入った漢方薬をいっぱい飲めば脂肪がガンガン燃えるとか、ハッピーになれるとか、そんなことはくれぐれもお考えにならぬようお願いします。おそらくその前に肝臓や心臓が根を上げてしまい、取り返しのつかないことになりますから。

大黄(ダイオウ):便秘に悩む人に巧みに取り入る詐欺師

容疑:耐性と大腸メラノーシスを起こした罪

凶器:センノシド
便秘に効く漢方処方の多くには大黄が入っています。もうひとつ、便秘に良く用いられる植物で「センナ」というものがありますが、どちらも「センノシド」という成分が腸内細菌によって分解され大腸を刺激する物質に変化するという仕組みは同じで、大腸刺激性下剤に分類されます。便を送り出す動き(蠕動運動)をさぼっている腸をむち打って強引に動かすわけですからとてもよく効きますし、処方するお医者様も大変多いのです。

漢方(生薬)だと思って安心して飲み続けておられる方も多いと思いますが、大腸刺激性下剤の一番の問題は長期間常用し続けると耐性ができて量を増やさないと効かなくなることです。最悪の場合、刺激無しではびくとも動かない重症の「弛緩性便秘」になってしまいます。腸もかまいすぎると自主性を失ったダメな子になっちゃうってことですかね。
さらには腸管粘膜細胞をも傷つけることになり、大腸粘膜が黒くなる「大腸メラノーシス」を引き起こします。黒茶の見事なヒョウ柄になっている内視鏡写真は画像検索すれば見つかりますよ(見るのはあまりお薦めしませんけど)。ヒョウ柄が好きなオバちゃんも、大腸粘膜がヒョウ柄になるのはさすがに嬉しくないと思いますが、センノシドを止めたり減らしたりすれば元通りのピンク色のきれいな腸に戻りますので安心してください。

こと下剤に関してはこの漢方系の大腸刺激性下剤が一番強くて副作用も大きいのです。便秘だと感じたらまずは生活を見直して、大腸のやる気スイッチを探しましょう。下剤を飲むのは最終手段だと心得て常用を避けるのが肝要です。

山梔子(サンシシ):腸に密かに忍び寄るストーカー

・容疑:腸間膜静脈硬化症を引き起こした罪
・凶器:ゲニポシド

山梔子は梅雨の雨上がりに香るあのクチナシの果実を乾燥させたもので、炎症を鎮めたり精神を安定させる作用があります。

副作用である「腸間膜静脈硬化症」とは、大腸壁から腸間膜にかけての静脈にカルシウムが沈着(石灰化)して血管の流れを妨げ、腸管に血液がうまく巡らなくなる病気です。山梔子に含まれる「ゲニポシド」が関与していることが分かっています。

山梔子を含む漢方薬を5年以上飲み続けており、腹痛があって便秘や下痢を繰り返し、いつもお腹が張ったような感覚があるなら直ちに医療機関を受診してください。中には自覚症状がなく、検便で潜血が陽性になってわかる方もいらっしゃるので、できればCTや大腸内視鏡検査は定期的に受けたいものです。
腸間膜静脈硬化症の進んだ腸の粘膜は青黒く変色してむくんでいるのが特徴です。重症の場合は時間がかかりますが、適切な処置を受ければ回復するので初期症状を見逃さないことが大切です。

 

漢方未解決事件「小柴胡湯と間質性肺炎」

ここまでご紹介したのは、言ってみればチンピラクラス。こちらの対応さえ過たなければ命にかかわるようなことにはなりません。しかし、これからお話しするのは漢方副作用史上最悪の死亡事件です。

 

小柴胡湯事件のあらまし

発端は今から30年近くも前の1990年代初頭です。

当時、小柴胡湯(No.9:しょうさいことう)は慢性肝炎、特にC型肝炎の炎症を抑え肝硬変や肝ガンへの移行を防ぐ働きがあるとして大変重宝されていました。使用者は一時100万人にも及び、医療用漢方製剤の売上のうち約3割がこの小柴胡湯だったほどです(*1)。
そんな中、肝炎の治療に小柴胡湯と当時使用がみとめられたばかりのインターフェロンを併用していた患者さんが息苦しさや咳を訴えられ「間質性肺炎」と診断されるケースが急増しはじめました。

事態を重く見た厚生省が1994年に注意喚起しましたが、その後も報告が相次ぎ1996年になんと10人もの死亡が確認されたのです。漢方薬の安全神話が崩れた瞬間でした。
新聞でも大きく報道されましたからご記憶の方も多いと思います。

(*1)ツムラ投資家情報より

 

間質性肺炎とはどんな病気?

 

問題となった間質性肺炎はどういう病気なのでしょう。肺炎と聞くと病原菌に感染して起きるものを想像しますが、間質性肺炎は全く異質の病気です。

肺は、肺胞という風船のような組織が集まってできています。肺胞間を隔てる薄い壁、風船のゴムにあたる部分が「間質」で、そこが炎症を起こして本来柔軟性のあるべき間質が硬く厚くなる(線維化する)のが間質性肺炎です。
間質には毛細血管が通っており酸素と二酸化炭素の受け渡し(ガス交換)をしているので、ここが繊維化してしまうとガス交換が妨げられて慢性的に酸欠状態になり、息切れや乾いた咳(空咳)といった症状が表れてくるのです。

残念なことに進行を遅らせるためのお薬を服用する以外、有効な治療法が無いのが現状です。
多くは何年もかけて徐々に悪化していきますが、インフルエンザなどの感染症や普通の肺炎が引き金になって急激に悪化することがあります。これを「急性増悪」と言い、最悪の場合は呼吸ができなくなって死に至るのです。
発症の原因は放射線や薬の副作用、アレルギーや膠原病など様々で特定できないことも多いのですが、免疫システムがうまく働かなくなるという共通点はあります。

犯人はいったい誰?

もし本当に小柴胡湯が間質性肺炎を引き起こしたのであれば、含まれる生薬にアレルギーがあったか、もしは生薬に含まれる物質の薬理作用などが考えられます。容疑者として主成分である柴胡(サイコ)と作用が強めの黄芩(オウゴン)が浮上しました。
その後、小柴胡湯以外の漢方処方でも間質性肺炎の発症が報告され、その多くに黄芩が含まれていたので、これこそが主犯なのではないかと考えられるようになりました。
現在は、黄芩単独犯人説、黄芩と柴胡の相乗効果説の二つが主流ですが、黄芩と半夏(ハンゲ)の組み合わせも可能性を消しきれていません。

 

未だ全貌は解明されてない

人間の免疫システムは、曖昧さの中で絶妙なバランスを保っているようなところがあり、未だ全貌解明にはほど遠いのです。サイトカイン(インターフェロン・インターロイキンなど)をメッセージのように操る細胞同士のやり取りは気の遠くなるほど複雑で、ちょっとばかり解った部分を治療に利用しようとしても、思わぬしっぺ返しを食らいかねません。
もともと人間が持っている免疫力や内分泌機能を活性化させる漢方の効果に、同じようなサイトカインを利用した治療が加わることで、ドミノ倒しのようなブレーキの利かない状態を作り出してしまったのかもしれません。

しかし、失敗してもそれを足がかりにしてより高いところに登って行けるのが科学の良いところです。いずれは全貌が解明されることでしょう。

 

漢方薬トラブルの三大原因

薬の副作用(効果)を語るときは、発生数(分子)だけでなく、分母である集団の大きさや、選択に偏りがないかも見極める必要があります。間質性肺炎を発症する頻度は10万人に4人と言われているので、小柴胡湯の問題もたくさんの人が使用することではじめて顕在化してきたということでしょう。
確率で見る限り、漢方薬はかなり安全な部類に入ると思います。副作用を起こすのは、やはり間違った用法に負うところが大きいのです。

1. 定められた用量を守らない(大量服用)

どんな薬にも言えることですが、大量に飲めば自分自身の解毒能力が追いつかず肝臓に負担がかかってしまいます。漢方薬は安全だと勝手に思い込み、早く効果を出そうと多く飲んでしまうなんてもってのほかです。責められるべきは薬ではなく使用者でしょう。

2. 体質(証)に合っていないのに服用を続ける

本来、漢方薬は「証」に基づいて処方されるので、同じ病名でも患者さんの体質や状態によって配合生薬が変わります。西洋医学とは考え方が根本的に異なるにも関わらず「この病気にはこの薬」といった西洋医学的な使い方をしてしまうことで問題が生じやすくなります。処方の見直しもせず、漫然と使い続けるのはさらに危険です。

 

3. 安全神話を信じて副作用を疑わない

未だに漢方薬の安全神話には根強いものがあります。そのせいか、体に不調が出ても漢方薬が原因かもしれないと思い至らないのです。他の薬との併用に抵抗を感じないことも、副作用の可能性をさらに大きくしてしまいます。

まとめ

漢方に親しんでいただくシリーズもここらで一段落としたいと思います。せっかく漢方でセルフメディケーションに挑戦しようと思ったのに、ちょっと怖いお話で気分が萎えてしまいましたか?
どうかそんなことはおっしゃらずに、漢方薬をたしなむなら、良いところも悪いところも知った上で「危険は最小限、効果は最大限」を目指していただきたいと思います。

最後に、今回ご説明した生薬を含む処方の一覧表を掲載しておきます。お役立てください。

付録:注意すべき生薬を含有する漢方処方一覧

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