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スタッフコラム

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女性ホルモン検査でわかること1・性周期と無月経

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安定した生理が繰り返されていることは、女性ホルモンの分泌が正常であることの目安になります。たとえば妊娠でもないのに生理が来なくなるなどの症状が出た場合、その原因を探る上でホルモンの状態を調べることはとても重要です。

前回「女性ホルモンの基礎知識」でご説明した通り、ホルモンが分泌されるためには脳から指令がでて脳下垂体からメッセージが送られ、それを受けて卵巣がちゃんと働くことが必要な訳ですが(コビトさんが伝言ゲームしているイメージ)、それがうまくいっていないということは、どこかのコビトさんがさぼっていたり、具合が悪かったりする可能性があるということです。

それを順番に探していくために、まずは成熟期の女性における分泌のタイミングや基準値を見ていきましょう。

性周期とホルモンの関係

性周期とは何か

まずは性周期のおさらいです。成熟した卵子が一つずつ排卵されるサイクル「卵巣周期」と子宮の内膜がだんだんフカフカになって受精卵を待ち、着床がなければ崩れて排出される「月経周期(子宮内膜周期とも言う)」の両方を合わせて性周期と言います。

どちらも生理(月経)が始まった日からスタートすると考えます。図は28日周期の例ですが、実際は25日から35日くらいの個人差がありますし、2割の女性で周期が不規則であるというデータもあります。

  • 卵巣周期:月経→卵胞期→排卵期→黄体期
  • 月経周期:月経→増殖期→分泌期

妊娠をしない限りこの周期は繰り返されます。そしてこの周期を作っている張本人がホルモンなのです。

前回に次いでまた出ました「性周期とホルモン分泌の相関図」、今回はFSHとLHにも注目です。

FSHとLHは卵子を1つ送り出すコントローラー

脳下垂体から出るゴナドトロピンのFSHとLHはゲームコントローラーについているボタンみたいなものです。押しているのは視床下部の指令ホルモンGnRHです。

遠隔操作で1つのボール(卵胞)を大きく育てながらゴールに導くゲームみたいなもんでしょうか。E2(エストロゲン)の濃度のモニターと首っ引きで、等間隔押しとか連打とかかなりシビアなコントロールが要求されるらしいんですが、本当のところ卵胞発育のメカニズムはとても複雑で完全には解明されていないんです。

ただし、卵胞がめいっぱい大きくなるとコントロールボタンの大連打がおこり、LHが大量に分泌されるので排卵のタイミングを知ることができます。これをLHサージと言います。近頃話題の排卵検査薬はこのLHサージを検出しているんですね。

排卵までのステージ1が終了するとステージ2(黄体期)がスタートです。途中でボーナスアイテム(精子)をゲットして子宮という最終ゴールに導くのですが、アイテムをゲットできてないとゲームオーバーでステージ1からやり直しです。(しかも、ゴールのお城は大崩壊?!)

卵巣から出るE2とP4は卵胞の状態を示すモニター

一方、現場である卵巣でのホルモン状態ですが、これは卵胞の状態と密接な関係があります。言い換えれば卵胞が今どこのステージにあるのかを脳の司令塔に伝える役割もあるということです。

未熟な卵胞からは主にE2(エストロゲン)が分泌されます。排卵直前まで卵胞が大きくなるとE2もピークに達します。排卵後の卵胞は「黄体」というものに変化し主にP4(プロゲステロン)を分泌するようになるので、P4がE2を上回るようになります。P4の増加に伴って基礎体温も上昇します。

E2とP4の主な仕事は前回説明した通り受精卵のためのフカフカベッドの準備ですが、こちらも受精がおこらないとベッドは壊され(月経)、また新しいベッドを作る準備に入ります。これを受精卵がベッドに入ってくれるまで延々繰り返すのです。

性周期とホルモン基準値

このように性周期でホルモンの分泌量は大きく変動しますので、どの時点で採血したかがわからないと結果を判断するのが難しいのです。
まずは基礎体温を測り自分の性周期を把握することが必要ですが、周期が安定しない場合はエコー(超音波)で卵胞の大きさを確認しながら検査のタイミングをはかることもあります。

なお、上図に示した検査時期は、健康診断時など正常に月経がある場合の目安なので、そもそも月経がストップしている場合は来院の時点ですぐに採血することになります。さらに、ホルモンを投与して反応を見るなど複数回測定して初めて正しい診断ができるようになります。

下表は性周期のステージ別、血中ホルモン基準値です。この数値は当院が依頼する検査会社が提示しているものですが、あくまで参考として捉えてください。

項目(単位) 卵胞期 排卵期 黄体期
FSH(mlU/mL) 3.0〜14.7 3.2〜16.6 1.5〜8.5
LH(mlU/mL) 1.8〜10.2 2.2〜88.3 5.7〜64.3
E2(pg/mL) 19.0〜226.0 49.0〜487.0 78.0〜252.0
P4(ng/mL) 0.4以下 3.7以下 8.5〜21.9

生理が来なくなった時、原因を探る

通常、3か月以上生理が止まってしまった状態のことを無月経と言います。その原因を探るにはホルモン検査は欠かせません。なおここで扱う無月経は今までは正常に月経があった場合で、子宮の病気や妊娠の可能性も除外します。(続発無月経と言います)

では、具体的に検査数値からどのように原因を特定するのか見ていきましょう。

まずはプロラクチンの値に注目

前回も説明しましたが、プロラクチン(乳腺刺激ホルモン、略称PRL)は脳下垂体から分泌される、出産後に母乳を出すためのホルモンです。
妊娠してもいないのにこれが高いということは明らかに問題で高プロラクチン血症と診断されます。身体が妊娠出産モードになっているわけですから当然月経もありません。顕著な場合は乳汁も出てきます。(男性にもあるんですよ!)

高プロラクチン血症の原因で一番多いのが、脳下垂体にプロラクチンを作る腫瘍(プロラクチノーマ)が出来ている場合で、確認のためMRIを行います。また、同じ視床下部で制御されている甲状腺機能についても異常が無いか調べます。

その他、近年増加傾向にあるのがお薬の副作用が原因となっている場合です。一部の抗うつ薬や抗精神病薬は服用すると高プロラクチン血症を引き起こします。妊娠を望まれる方がこれらのお薬を服用される場合は、リスクを十分に理解して処方していただいてください。

項目(単位) 基準値
PRL(ng/mL) 6.1~30.5

ここで第一段階の振り分けができましたので、いよいよ問題部位の特定に入ります。先ほど、性周期のホルモン分泌の仕組みをゲームに例えたのを思い出してください。せっかくなので、今回はゲームの例えで攻めることにいたしましょう。

卵巣に問題:ゲーム機本体が不調

プロラクチンの次に着目するのはゴナドトロピンのLHとFSHです。

LHとFSHの値がとても高い場合、コントロールボタンを一生懸命連打しているような状態だと考えられます。どうして連打しているかというと、卵巣で思った通りにホルモンが分泌されないから。
そうなるとこれは生産現場である卵巣が怪しいということになります。ゲーム機本体が壊れてたら当然コントローラーには反応しませんからね。

エストロゲン(E2)やプロゲステロン(P4)の分泌は卵胞の状態と密接に関係しています。卵巣は全ての卵胞を出し尽くしてしまうとその寿命を終えホルモンも分泌しなくなります。45歳以上なら卵胞が尽きてしまったとあきらめなければなりませんが、40歳未満なら早発卵巣不全(POF)の可能性があります。

PCOS:多嚢胞性卵巣症候群

LHの値が高くFSHを上回っている場合に考えられる疾患です。普通なら卵胞は一つだけ大きく育って排卵されますが、未熟なままの卵胞がいくつも卵巣内にとどまり排卵が起こりにくくなる病状で、エコーで確認できます。不妊の原因にもなります。

脳下垂体に問題:コントローラーが壊れている

LHとFSHの値が正常範囲もしくは低い場合、その一つ前段階にさかのぼってLHとFSHを出すための指令ホルモンであるGnRHに着目します。

GnRHと同じ働きをするお薬を投与してみてもLHとFSHに変化が無い場合は、脳下垂体がちゃんと機能していないのかもしれません。ボタンを押してるけど通電していないというか、ボタンがスカスカの使いすぎて壊れたコントローラーみたいな感じです。

脳下垂体が機能不全になる原因としては最初にあげたプロラクチノーマや、分娩時の大量出血が原因で起こるSheehan症候群などがあります。
反対に、GnRHに反応して脳下垂体からLHとFSHが分泌された場合は、GnRHがちゃんと出ていないということになりますからさらに前の段階に原因を探さなくてはなりません。

脳の視床下部に問題:そもそもゲームする気がない

これが一番やっかいなのですが、10〜20代の若い女性の無月経の原因の多くはこの視床下部性の無月経です。過度なダイエットをしたら生理が止まってしまった、というアレ。

ゲーム話で例えると、真冬に深刻な電力不足が起きたとき、暖房も照明も消してゲームを優先する人っていませんよね。身体も同じです。何はともあれ生命活動の維持を優先しますから生殖活動は後回しにされてしまいます。司令塔である脳が「そんなことしている場合ではない」と判断したということですね。
単純な飢餓状態やスポーツで体脂肪を落としすぎた場合もありますし、ストレスが原因の場合(神経性食欲不振症など)もあります。ストレスが強い場合は体重減少より先に生理が止まってしまうこともあります。どちらも、無月経の治療より栄養状態を改善したり心理的なストレスを取り除いたりする方が優先事項になります。実際に状態が改善されれば月経も元通りになることが多いのです。

ただし、このような無月経を放置したり繰り返したりしていると最後は卵巣が機能を停止しエストロゲンやプロゲステロンも出なくなってしまいます。(放置されほこりをかぶって壊れてしまったゲーム機、かわいそうですぅ。)
未だに痩せることに執着してる若い女性は多いですが、多少太ることよりも痩せすぎてエストロゲンがでなくなってしまう方がはるかに女性としての魅力を損なわせ、老化も加速するということだけは肝に銘じておいてください。

無月経のホルモン治療

無月経は不妊の原因になるだけでなく、女性ホルモン不足による様々な不調を引き起こしますから治療が必要です。

検査で足りないホルモンを見極め、エストロゲンやプロゲステロン(の働きをするホルモン剤)を性周期のホルモン分泌グラフの状態をまねて服用していきます。(ただし、妊娠を目的とする場合は直接的なホルモン投与はできません。)ホルモン剤に手伝ってもらって身体に性周期を思い出させるという感じでしょうか。
脳が血中のホルモン濃度を監視してコントロールしていることを逆手に取り、外からホルモンを補充することでこのフィードバックシステムを刺激し揺り起こすのです。

この時、もし卵巣でエストロゲンが分泌されていれば子宮粘膜は既に増殖しているので、プロゲステロンの働きをするお薬を服用するだけで生理のような出血が来ます(第1度無月経)。しかし、卵巣機能が停止していてエストロゲンも不足している場合は、エストロゲンとプロゲステロン両方のホルモン剤を服用することになります(第2度無月経)。

視床下部性の無月経の場合、まずは身体とココロを元気にすることが第一です。またホルモン剤のほかに、漢方薬を併用する場合もあります。
無月経の期間が長引けば長引くほど第二度無月経になる可能性は高くなり、治療はより困難になりますから、すみやかに対応しなければなりません。

無月経はかなり極端な例と言えるかもしれませんが決して稀なことでもありません。女性の身体はあまりに精巧なシステムであるが故に、ほんのちょっとしたことで全てが噛み合なくなってしまうこともあるのです。

次回は、生理はあるのになかなか妊娠しないのなどの、妊活中の問題に焦点を当ててホルモン数値を読み解きます。

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