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女性のための漢方入門3:実践!婦人科三大処方を選ぶ

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前回は基礎編として漢方の見立てについてご説明しましたが、今回は漢方薬の中身、すなわち材料である生薬についてちょっと説明します。
それが終わったらいよいよ実践編です。女性の多くが悩む生理不順や生理痛、PMSや更年期障害になどに処方される「婦人科三大処方」に焦点を当て、自分に合った漢方の選び方を説明いたします。

 

漢方薬の材料と作り方

漢方薬=生薬ではありません

漢方薬は、いくつかの生薬を組み合わせて作られています。生薬(しょうやく・きぐすり)とは、天然の植物・鉱物・動物などを、加工や精製をしないでそのまま用いる薬のことです。中にはみかんの皮とか牡蠣のからとか、ホントに薬になるの?と聞きたいようなものもあります。
天然物から化学式で表せるような特定の物質を抽出し、機序(化学的な作用)を解明し、さらにその物質を人工的に作り出せるようになるのが近代的薬開発のゴールだとすれば、研究途上で何が入っているのか分からないけど効果があるのだったら材料をまるっと食べちゃおうというのが生薬ということです。
そう聞くとなんだか怪しいもののようですが、現在の漢方薬は中国伝来の医学と生薬を日本で育んだ漢方医学に基づいたものですから安心してください。それぞれの処方が、Aの効果を引き出すためにBを入れBの副作用を抑えるためにCを入れるといったような、長い年月をかけて効果や害を見定めながら編み出された非常に完成度の高いレシピなのです。

それぞれの生薬に効能があり、いくつもの生薬が配合され、さらにそれらの組み合わせによっても新しい効果が生まれすので、漢方薬は「ひとつの薬に効果がたくさん」となるのです。

 

料理と思えば漢方薬名も納得

漢方薬の作り方は、素材Aの風味を引き出すために素材Bを入れBの臭みを抑えるためにスパイスCを入れるような料理にそっくりでしょう? 食材にも生薬にも栄養素・風味・効能があり、それらをバランスよく配合するのが料理や処方の基本ということです。これぞまさしく「薬食同源」です。(医食同源というコトバはちょっぴり間違い)

ビーフシチューを考えてみましょう。牛肉が入っていなかったらビーフシチューにはなり得ませんが、かといって牛肉だけがごゴロっとお湯に浸かっていてもビーフシチューと呼べません(うちの嫁はそう呼ぶ、とかはナシ)。じっくり煮込んで野菜の甘みや赤ワインの風味が加わってこそのビーフシチューです。いろんな材料がはいっているけどビーフシチューであるのと同じようにいろんな生薬が入っているけど葛根湯なのです。メイン材料+処理方法(湯・散・丸)という名付け方です。たまに中身に関係ない不思議な名前があるのも似ています。アクアパッツァ(奇妙な水)はさしずめ神秘湯といったところでしょうか?

最近は漢方薬も標準化されて、葛根湯などの有名どころのレシピは統一されていますが、それでもメーカーや医療用・店頭販売用で各生薬の配合量等に若干の違いがあります。
レストランで食べる本格シチューが生薬を扱う漢方専門薬局で買ったものだとすると、コンビニのレトルトシチューがエキス製剤みたいなものですね。ツムラとクラシエの差はセブンイレブンとローソンの差くらいですか。あとはお好みでお選びください。

 

生薬人気者Best5

え?生薬の名前がわからなければ名前の法則がわかったとこころで意味が無い? おっしゃる通りです。

地道に覚えていただくしかないのですが、生薬の数はとても多く、現在保険適用の148処方に使われているものに絞っても100種類以上あります。とは言え良く使用されるものは偏っており、そのうちの約半数程度です。
中でも多く使われる生薬は、甘草(カンゾウ)・生姜(ショウキョウ)・茯苓(ブクリョウ)・芍薬(シャクヤク)・桂皮(ケイヒ)です。これらのどれも入っていない漢方薬を探す方が難しいくらいですから覚えておいて損はありません。
ちなみに生薬配合数の多さでは1位が「防風通聖散」で18種類、少なさでは「芍薬甘草湯」や「大黄甘草湯」で名前にあるたった2種類で構成されています。

 

婦人科三大処方、あなたに合うのはどれ?

 

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)・加味逍遥散(かみしょうようさん)・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、23、24、25番と仲良く並んだこの3つの漢方薬は婦人科三大処方と呼ばれ、効能として共に生理不順や生理痛、更年期障害を謳っています。
これらの症状から漢方薬を探すとこの三種が候補として出てくるものの、その先の三者択一で迷ってしまわれる方が多いのではないでしょうか。
前回の「考え方の基礎を知る」でもちょっと説明しましたが、漢方では女性特有のトラブルを「血の道」の不具合と捉え、中でも血が滞る瘀血にその原因があると考えるので、この三大処方は駆瘀血剤という共通の面を持っています。 その上で、こちらも前回説明した基本体質である「証」や同時に表れる諸症状を考慮してどれがあなたにとって最適な処方かを探っていきます。

 

当帰芍薬散(No.23:とうきしゃくやくさん)

血の巡りの悪さもさることながら、そもそも巡る血も足りていないような虚弱体質の方には23番です。芍薬(シャクヤク)で血を補い、当帰(トウキ)で暖めて巡らせます。
こういう方は、月経不順にもなりやすく、月経が来れば来たで貧血とめまいに悩まされます。ベッドに入っても手足が冷たくてなかなか寝付けなかったり、いつもなんとなくだるさを感じている方におすすめできる処方です。
図を見ていただくとわかるように、水のトラブル(水毒)に対処する生薬も多く含まれています。利尿作用でむくみをとり、同時に消化吸収力を高めて食の細さを補います。 弱った体をいたわりながら優しく効いてくるタイプの生薬で構成されているので、妊婦さんにも処方されます。

 

加味逍遥散(No.24:かみしょうようさん)

入っている生薬の種類が多過ぎてメインが決まらなかったのでしょうか。随分とヘンな名前の漢方薬です。直訳すると「風味チョイ足し、シェフの気まぐれ処方」って感じ? (いえいえホントは「多彩な症状のために生薬を加える」と言う意味です。)

「逍遥(気ままな散歩)」の名の通り症状が定まらずコロコロ変わる人向けだそうで、製薬会社の営業さんにいただいた資料によりますと「不定愁訴のファーストチョイス、ややこしい人にはこれ」なんだそうです(失礼な!)。
もしあなたが受診し、ろくに話も聞いてもらえずに「とりあえずこれ飲んどいて」って24番を処方されたら、そういうマニュアルに沿った診察であったとあきらめていただくしかないのですが、服用してから様子を見て方向性を決めるというのは加味逍遥散の用法として間違っていません。せっかく(保険で)処方してもらえたのですから、2〜3週間程は試してみてください。

配合された生薬を見ると(上図参照)、他の2処方に比べて気に作用する生薬がたくさん配合されているのがわかります。血や水の巡りが悪くなっている原因を「気」のトラブルに求め、それを同時に解消することで直そうとするアプローチであることがわかります。効果の強さもバランスよく整えられているので、やや虚証から中間証程度まで幅広く対応できます。
加味逍遥散は自律神経に働きかけてホルモンバランスを整え、沈みがちな心に穏やかに作用しながら女性の体調不良を緩和する万人向けの処方と言えるでしょう。生理前に特に気分が落ち込む方や(PMS)イライラくよくよタイプの更年期の方におすすめします。

 

桂枝茯苓丸(No.25:けいしぶくりょうがん)

強い瘀血に牡丹皮(ボタンピ)と桃仁(トウニン)のダブルパンチ処方です。わりとガツンと効きますから体力のある中間証から実証タイプの方にお薦めです。
「ちょっと聞いてぇな〜、オバちゃん、足はヒエヒエなのに顔から汗ダラダラでとまらへんのよ〜」と真っ赤な顔で耳がキ〜ンとなるような声でおっしゃれば、まず25番確定でしょう。このオバちゃんのような更年期の冷えのぼせ(ホットフラッシュ)は気逆の代表的な症状で、暖炉の煙突がつまって熱い空気が天井にたまり、不完全燃焼を起こしかけているような状態です。桂皮(ケイヒ)で改善させます。
桂皮とは、スパイスでもおなじみのシナモンのことです。処方名では桂枝(ケイシ)となっているけれど、実際に配合されているのは桂皮です。シナモンロールが大好きな女性は多いけれど、ひょっとして体が求めているせいかもしれないですね。

桂枝茯苓丸には赤血球の状態を整える効果も確認されており、固まりで出血するような月経困難症や、子宮内膜炎などの炎症性疾患、打撲症ですぐ紫色のあざになってしまう場合などにも効果があります。血流が悪くなるタイプの肩こりにも効果的です。

 

薬との相性を判断する方法

飲み始める前に

まず大切なことは、他にお薬を服用している場合は、飲み始める前にかならずかかりつけのお医者様や薬剤師さんに相談してください。飲み合わせもさることながら、たとえ生薬でも量が多くなれば肝臓に負担がかかります。そのことは忘れないでください。
また、含まれている生薬にアレルギーが無いとは言い切れません。発疹や痒みが表れるようなことがあれば直ちに服用を止めてください。

 

良薬は口に甘(うま)し?

今回ご紹介したこの三処方はどれもじっくりじわじわと効いてくるタイプの漢方薬です。効果を実感していただくためには2〜3週間は続けていただかねばなりませんが、1ヶ月以上何も効果が感じられないのに長々と飲み続けるというのも考えものです。
体質(証)に合っていない場合は、胃ががむかむかしたり下痢や便秘になるなど、効果よりも副作用の方が先に表れてくる場合もあります。そういう場合は服用を中止し、かかりつけのお医者様や薬剤師さんに相談してください。

エキス製剤といってもそこは漢方薬、味や香りがあります。体に合っていて飲み続けられる漢方薬は、美味しいと感じられるものなのだそうです(友人の薬剤師さんの話)。味わうためにエキス製剤をお湯に溶かして飲まれる方もいらっしゃるくらいですから、はじめての漢方薬は飲み込む前にちょっと味見してみてもいいかも。

一定の効果が得られたら、継続するのか、あるいは別の処方にするのか見直すことも必要です。
漢方の処方には、これが絶対!というものはありません。選ぶには園芸や料理のように経験とセンスも重要だということかもしれません。

まずは自分自身の体調と会話できるようになり、そして足りない部分を補う処方が自在に選べて、病気になる一歩手前で引き返せるようになれば、いっぱしの漢方使いと言えるのでしょうか。
道のりは相当長そうです。漢方は実に奥の深いものですね。

 

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