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スタッフコラム

Staff Column

ポスト更年期のエストロゲン欠乏に備える

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ついに閉経の時がやってきました。卵巣が全ての卵子を送り出して役目を終えた証です。
卵巣から見れば妊娠成立こそが存在意義であり全てです。卵子がなくなればそのあと本体がどうなろうと知ったこっちゃありません。ホルモンもストップしさっさと店じまいです。女性美を作るホルモンの素敵な作用は日頃のご愛顧に感謝するサービスだったんですね。「私はまだ終わっていない!」と叫んだところで卵巣には聞こえません。いったいどうすればよいのやら…

ホルモンシリーズの最後は、女性がいつまでも美しく健康であるために覚えておきたい、来るべきエストロゲン欠乏の日への備え方で締めくくりたいと思います。

忍び寄るエストロゲンの欠乏

閉経後の主なエストロゲンはエストロン(E1)

閉経からしばらく経ち、ホットフラッシュも影を潜め一段落したのもつかの間、今度はエストロゲンそのものが不足することによる様々な不具合が表れ始めます(上図参照)。
閉経後、卵巣で作られるエストロゲンであるエストラジオール(E2)はほとんど分泌されなくなり、代わりに副腎や脂肪組織で作られるエストロン(E1)が主要なエストロゲンになりますが、量も効果もエストラジオールには遠く及びません。

老けるか or 太るか、それが問題だ

女性が閉経後に太りやすいのにはエストロゲン欠乏が深く関わっています(後述)。代謝だけでなく脳にまで作用して食欲を抑制してくれてたんです。
脂肪細胞のおかげでエストロゲンの良い効果をかろうじて保持できるのだから、太るのはその代償だとさえ言う人もいます。エストロゲンが出ないから太るのに、太ってるからエストロゲンが出るって、まるでニワトリとタマゴのよう。
太ればシワものびて若返り、なんて言ってる場合じゃなく、真の問題はその太り方にあります。ウエストのくびれがなくなって、お腹がぽっこり出てきたら要注意です。

メタボリックシンドロームとエストロゲン

内臓脂肪を溜め込むタイプ(リンゴ型・ビア樽型)の肥満になることで、高血糖・高血圧・脂質異常症などにかかりやすくなっている状態をメタボリックシンドローム(メタボ)と言うのは皆さま良くご存知のことと思います。
でもこのメタボの原因が、女性に限っては生活習慣よりもエストロゲン欠乏が引き金になっていることはあまりご存じないのではありませんか?

対メタボ・エストロゲン効果

  • 悪質な肥満の防止:内臓脂肪がたまるのを防ぐ
  • 脂質異常症の防止:善玉コレステロールを増やし悪玉は減らす
  • 糖尿病の防止:インスリンの作用を助けて糖代謝を良くする
  • 動脈硬化の防止:血管を拡張し抗酸化作用をもたらす

更年期以降はこれらの良い作用が全部なくなってしまうのですから、さあ大変!
加齢による基礎代謝の低下も加わって、今まで通りの生活習慣ではあっという間にメタボ認定です。外見はスリムなのに血糖値が高かったり脂質異常を発症している、いわゆる隠れメタボも女性に多いと言われています。 異常に気づかず放置していれば動脈硬化が進み、いずれは虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)脳血管障害(脳梗塞)を引き起こします。

閉経後に急増する女性の心疾患

なぜ国がメタボを減らすのに熱心なのかと言えば、上位の死因の中で(手強そうながん以外では)リスクをコントロールできそうなのが心疾患と脳血管障害だと考えたからでしょう。(医療費削減だけが目的とは言いません)
上のグラフはメタボと関わりの深いこの二つの病気が原因で亡くなった人の割合を、男女・年齢別で表したものです。 女性の心疾患に関しては、ここまで明快なグラフができるとは思っていなかったので作った本人もビックリです。閉経から5〜10年、エストロゲンの枯渇を待ってましたとばかりに急上昇を始めます。男性のグラフと比較するとその差は一目瞭然。エストロゲンがいかに女性の健康に貢献してくれていたかがわかります。脳血管障害も40代では男性より少なかったのに60代後半で逆転し、ジリジリと増えていっています。女性の心疾患は男性に比べて症状が分かりづらいのも問題です。背中の痛みや食欲不振など、狭心症とは関係ないような症状を訴える方も多いので見落とされてしまうのです。婦人科のお医者様は「女性を見たら妊婦だと思え」と教わるんだそうですが、こと閉経後の女性に関しては「女性を見たら心疾患だと思え」となりますね。

生活習慣だけでなんとかなるなら苦労は無い

このようにエストロゲンが密接に関わっているにも関わらず、メタボの基準はウエストが+5cmなのを除けば男女であまり性差もありませんし、そもそもエストロゲンや閉経の影響にほとんど言及されていません。放っておいても悪化する検査結果に、健康的な食生活と適度な運動だけで本当に対応できるのでしょうか?

答えを出すまでもうしばらくエストロゲン不足のお話におつきあいください。

新陳代謝とエストロゲン

エストロゲンは単独で作用するのではなくエストロゲン受容体(レセプター)と結びついてはじめてその効果を発揮します。
人間の体は皮膚も骨も新陳代謝で日々新しい細胞に入れかわっていますが、エストロゲン受容体は体のあらゆるところに存在し、成長ホルモンとして重要な役割を果たしています。

Check!:それなら男性はどうなるの?

男性の体の中でもエストロゲンはしっかり働いています。そもそもエストロゲンは男性ホルモン(テストステロン)から作られます。いままでテストステロン不足よるものと考えられてきた男性の症状のいくつかは、実はエストロゲン不足が原因であったことも最近ではわかってきています。

新陳代謝・エストロゲン効果

  • :骨吸収を抑制して骨からカルシウムが溶けだすのを防ぐ
  • 関節:軟骨や腱の緩衝材となるコラーゲンやムコ多糖類の生成を促す
  • 筋肉:筋肉減少を防ぎ、筋力を保持する
  • 皮膚:コラーゲンやヒアルロン酸の生成を助け弾力とみずみずしさを保持する

女性に骨粗鬆症が多いのは有名ですが、これは骨吸収(骨を壊す)を押さえていたエストロゲンのたがが外れて、骨形成が追いつかなくなることで起こります。

サプリでおなじみの名前も登場してきました。コラーゲン(弾力を作る)・ヒアルロン酸(水分を保つ)の名前は、肌を若々しく保つ成分として美容に関心のある女性ならだれでも知っていると思います。
コラーゲンやヒアルロン酸は、食べても塗っても実はほとんど効果がありません。さすがにヒアルロン酸を直接患部に注入すれば一時的な効果はありますが、自分自身で作り続けることができなければ吸収されておしまいです。エストロゲンは、これらを新しいものに作り替える再生装置である繊維芽細胞に働きかけ活発化します。皮膚に限らず、エストロゲンの効果が無くなり再性能力が低下すれば組織は萎縮してしまいます。

組み合わせで説明できるいろいろな症状

更年期以降にあらわれるトラブルはエストロゲン欠乏で起こる症状を組み合わせれば、だいたい説明できてしまいます。

  • しわ・たるみ:皮膚の弾力と水分量の低下
  • ドライアイ:水分量の低下。硝子体中のコラーゲン減少は網膜にも悪影響
  • 虫歯・歯周病:歯茎が萎縮し唾液が減り、免疫力が低下
  • 萎縮性膣炎:膣の弾力低下と分泌物の減少で免疫力が低下
  • 骨盤内臓器脱:骨盤や子宮を支える筋力低下・組織の弾力の低下
  • 尿失禁:骨盤を支える筋力の低下や括約筋の不全
  • 肩関節周囲炎(五十肩):骨・軟骨・腱の間にある組織の弾力の低下
  • 骨折:骨量の低下、筋力低下

尿モレや性交痛に悩んでおられる更年期女性はとても多いです。どちらもホルモン治療が有効ですので婦人科医に相談されることをおすすめします。

まだまだあるエストロゲンの影響

脳・神経とエストロゲン

エストロゲンが気持ちや頭の回転に作用していることは、性周期を経験してきた女性なら思い当たるのではないでしょうか。認知症の一つであるアルツハイマー病とエストロゲンの関連についても多くの研究がなされ、その影響が指摘されています。実際に、閉経後の女性は男性に比べてうつ病認知症の発症が増加することが分かっています。

がん・免疫とエストロゲン

エストロゲンが乳がんや子宮内膜がんの危険因子であることは有名ですが、これはエストロゲン受容体を持つがん細胞の場合に限られます。ある種のガンに対しては抑制的に働いているようです。
女性患者の多い自己免疫疾患(甲状腺機能異常・膠原病)も免疫機能を活性化するエストロゲンと免疫寛容を必要とする妊娠機能の混在が招いた状態と考えることもできます。
どちらも複雑すぎて解明されていない部分が多いのが現状ですが、女性の長寿を考えればメリットの方が多いと考えられるでしょう。

近年の研究では、エストロゲンは細胞分裂の限界を決める分子時計を巻き戻すような効果さえあると言われ、エストロゲンの作用は今も研究の真っ最中なのです。

エストロゲンでエイジングケア

お待たせいたしました。やっぱり知りたいのはコレですよね。ここまでご説明してきたエストロゲン欠乏の症状、これらを一言で言ってしまえば、そう老いるということです。(身も蓋もありませんが)
しかし、もう妊娠できなくなった(生産性がない?)からと言って、女性ばかり急激に老いがやってくるのはいくらなんでも不公平です。平均寿命を考えればあと30年は生きるのですから、なんとかしなくてはなりません。

HRT(ホルモン補充療法)継続という選択

ここまで見てきた老化の原因の多くはエストロゲン欠乏にあります。ということは、エストロゲンを外から補充し続ければ当然老化のスピードはゆっくりになります。

日本では、保険対象外になることもあって更年期の一過性の症状が治まるとHRTを止めてしまわれる方がほとんどです。しかし、欧米ではその後も継続される方が多く、20年以上を希望される方もいらっしゃるそうです。
お医者様のもとで正しくHRTを継続することは、生活習慣の改善や運動と同等に生活習慣病を予防でき、しかも美容にもうれしい効果がついてきますから、これを逃す手はありません。

エストロゲン不足は早めにコントロール

とは言え、すでに60代になり老化の症状が表れてしまってからではHRTの効果はほとんどありません。エストロゲンは夢の若返り薬ではありません。老化へのアクセルをゆるめることはできても、バックすることはできないのです。エイジング対策としてのHRTは、遅くとも閉経後2〜3年以内には開始するのが望ましいでしょう。

エイジングケアもやっぱりオーダーメイド

年齢の重ね方は本当に個人差が大きいですから定期的に診察と検査を行って何が必要なのかを見極めます。そしてご本人の希望を取り入れつつ、処方(HRT・漢方・サプリメント)と施術(注射・点滴・アロマテラピー)を組みあわせていきます。もちろん生活習慣へのアドバイスと心のケアも欠かせません。エイジングケアも更年期治療と同じように一人一人に合わせてデザインされたオーダーメイドなのです。

目的意識を持ったエイジングケアを

年を取れば若い頃とは外見が異なってくるのは当たり前のことです。美しさの基準を「若さ」に置いたまま度を超したアンチエイジングを求めることは、かえって心への大きなストレスになってしまいますし、良い結果も得られません。ストレスコントロール上手になることも、若さを保つ秘訣です。周りを気にしすぎて自分の心を傷つけてしまわないよう、主体性を持って取り組んでください。

ポスト更年期の本当の美しさを決めるのは、人生に対する幸福感・充実感、そして健康だと私は思います。つまらない言い方でしたね。「体に痛いところや辛い症状が無く、やりたいことがいっぱいあってしかもそれに挑戦できるから輝ける」と言い換えましょうか。例えば高齢出産をされた方なら、お子様が成人するまで健康で若々しく活動的でいたいというのが大きな目標になるはずです。

終わりに

病気の治療のみならず健やかな年齢の重ね方を提案することも、かかりつけ婦人科医とメノポーズ・カウンセラーの役目であると考えます。10年後20年後のご自分を想像して目的を定め、健康でありたいという強い意志を持って望めば、体は必ず応えてくれるはず。私たちも全力でサポートいたします。

「女性の一生はホルモンの奴隷だ」などと言われますが、そんな悲しい言葉に納得することなく、ホルモンを味方につけ逆にコントロールするくらいの心意気で、女性という性を命尽きるときまで謳歌していただきたいと願っています。

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