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スタッフコラム

Staff Column

ウイルスVS免疫:ワクチン接種の本当の意味

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免疫の基本の「き」

「一度感染して治ってしまえば、もうその病気に罹る心配はなくなる。」皆さんは免疫と言えばこういうイメージをお持ちだと思います。
しかし、実際はそんなに単純なものではないのです。

自然免疫と獲得免疫

上のイラストをご覧下さい。

最前線を巡回しながら怪しければとりあえず壊してみるとか、食べてみるというのが自然免疫
血液に乗って体中に広がったり、細胞の中に入り込むような厄介な相手(もっぱらウイルス)には、リンパ球の仲間であるT細胞やB細胞が専門の攻撃部隊を編成して病原体を駆逐します。こちらが獲得免疫
普段は地域のお巡りさんのパトロールで事なきを得ているけれど、いざ凶悪犯が跋扈し始めたら捜査本部が立ち上がって刑事さん達が効率的に働いてくれる警察に似ていますね。
そして、リンパ球たちは一度感染した病原体を覚えているので(免疫記憶と言います)再び感染した時には瞬く間に抗体を作り出して撃退します。
一般的な免疫のイメージはこの獲得免疫のことを指しているわけです。

ウイルスVS免疫

一方、ウイルスは単独では活動して数を増やすことが出来ないので、どうしても寄生する相手(宿主:しゅくしゅ)が必要になります。ですからウイルス側から見れば、私達の免疫をいかにすり抜けるかが、生き残りをかけた重要課題なのです。ウイルスの戦略によっては私達が誇る免疫システムもまんまとだまされてしまうことだってあります。

それでは免疫のでき方のいろいろを見ていくことにしましょう。

免疫のでき方、いろいろ

一生免疫が持続するタイプ:これぞ免疫の理想型

はしか、おたふく風邪、風疹。この新三種混合ワクチンMMRの対象こそ終生免疫ができる代表選手です。
ただし何十年も型を全く変えないとか、ウイルスがぼーっとしているタイプじゃないとうまくいかないんですよね。もちろん私達の免疫記憶も完璧じゃないので忘れることもありますが、きっとこのタイプは一度見たら忘れられないようなインパクトの強い相手でもあるのでしょう。

ワクチン接種が徹底されれば、こういうウイルスはヒト以外への感染に活路を見出さない限り、遅かれ早かれこの世界から退場することになると思います。かつて天然痘がそうであったように。

免疫が持続しないタイプ:定期的にワクチン接種

私達の免疫記憶に残りにくい相手もいます。時間が立つとだんだんと抗体が減ってしまいそれっきりになってしまうのです。

免疫が持続しない理由の一つにウイルスの遺伝子変異があります。A型インフルエンザなどは抗原部分を巧みに変化させてくるので、せっかく作られた抗体がすぐに役に立たなくなってしまうのです。
そこで、その年に流行しそうな型を予測してワクチンが作られるのですが、100%当たるわけではないのが悩みどころです。といっても、類似のウイルスやちょっとした変異であればある程度免疫が働くことがあり、これを交差反応と言います。忖度無しの堅物である私たちの免疫も多少は気を効かせることがあるわけです。

ワクチン接種は有効ではありますが、その効果は持って半年ほどなので定期的に接種する必要がでてきます。同様なものにポリオやデング熱も含まれますが、デング熱は残念ながらワクチン開発がうまくいきませんでした(後述)。

免疫ができても弱いタイプ:ワクチンの力で強力免疫に

このタイプは、症状の出ない不顕性感染であることがほとんどです。感染が直接の原因となってひどい炎症を引き起こすことが無いため、放っておいても大方は問題になりませんが、逆に言うと抗体が作られにくいということです。自然免疫で簡単に撃退できてしまうと、十分な抗体が作られる前に感染が終わってしまうので何度も感染と撃退を始めから繰り返すことになってしまうのです。

また、一部の人では撃退しきれずに持続感染が起こることがあります(キャリア状態)。持続感染が何年にも及ぶとウイルスが細胞の遺伝子を変化させがんになってしまうことがあるので、感染予防対策が必要になります。

よく知られているものに子宮頸がんの原因になるHPV(ヒトパピローマウイルス)B型肝炎ウイルスなどがあります。持続感染を引き起こす前にワクチンを接種して、人工的に十分な抗体を作らせる方法が有効です。

免疫がほぼ機能しないタイプ:しかたなく気長におつきあい

このタイプのウイルスは子供のころに気づかないうちに感染し、普段は免疫細胞に見つからないようにじっと身を潜めていて(潜伏感染)、宿主の体が弱ったところを見計らって悪さをします。疲れると口の側にポツッと水ぶくれができてしまうヘルペスウイルスなどが有名です。

言わばヒトと共生状態となっているのでウイルス側から見れば最も成功した事例です。抗体検査をすれば陽性になるものの、体から追い出せなかった訳ですからヒト側からみたら失敗です。再発であれば重篤な症状を起こすことは稀なので、免疫力を落とさないように心がけつつ症状が出たら抗ウイルス薬で治療するしかありません。

なぜ体が弱るとウイルスが活発化するかと言えば、免疫力が低下したこともありますが、ウイルス側から言うとそろそろガタが来そうな宿主からより丈夫で長持ちしそうな宿主に乗り換え準備を始めたということでもあります。ウイルスに意思など無いとわかっていてもこのしたたかさには腹が立ちますよね。

妊娠初期に検査するサイトメガロウイルス(CMV)もこの類いですが、CMV関しては初期感染と妊娠のタイミングが重なると、胎児が障害を持って産まれる可能性があるので注意が必要です。(当院では妊娠初期に抗体検査を行います)

新型コロナウイルスの免疫はどのタイプ?

気になる新型コロナウイルスですが、おそらく上記の2〜3番目、免疫が持続しなかったり、できても弱いタイプになってしまう可能性が高いと考えられています。
このウイルスは遺伝情報としてとても長いRNA(核酸)を持っているので、その分変異の可能性が高くなることに加えて、若い人に多い症状が表れない不顕性感染は、十分な抗体が作られない可能性も示唆しています。

ちょっと怖い免疫の話

私達の免疫システムはとても複雑でデリケートです。いつでも必ず私達の体を守るように働いてくれるとは限りません。膠原病や関節リウマチなどは免疫うまく働かなくなるために起きる病気ですが、病原体への感染が引き金になって引き起こされる免疫の不全もあります。

抗体依存性感染増強(ADE)

最初の感染で作られた抗体が(交差反応の場合もあります)、2度目に感染した時ウイルスを無力化するどころか、かえって感染の手引きをしてしまい重症化を招くという現象です。
これはもう、味方だと信じていたものが実は敵のスパイだった!くらいの衝撃ですよね。蚊が媒介するデング熱は、この現象のせいでワクチン接種が中止されてしまいました。

サイトカインストーム

近頃はニュースなどでも頻繁に耳にするようになった言葉です。サイトカインとは免疫細胞どうしがやり取りするメッセージのようなものです。免疫細胞達がパニックを起こして暴走し「大変だ!戦わなくちゃ」というメッセージの大合唱のもと、感染した細胞、そうでない細胞の区別なく手当たり次第攻撃してしまう現象です。これを止められなければ体中が炎症だらけになってしまい、最終的には死を招くことになってしまいます。
100年前のインフルエンザ(スペイン風邪)が多くの死者を出した原因もこのサイトカインストームだったと言われています。若者が多く犠牲になった理由も、免疫力が強いのが逆に仇になったからという訳です。

どちらも、特定のウイルスでどの宿主にも必ず起きるというものではなく、引き起こされる仕組みや原因なども完全に解明されたわけではないのです。新型コロナウイルスは、これらの怖い現象を引き起こす可能性も疑われており、ワクチン開発が困難であろうことも想像に難くありません。

ワクチン接種と公衆衛生

ワクチンや治療薬開発の難しさ

上記の例からもわかるように、人間の免疫システムに介入するような治療法や薬の使用は、慎重の上にも慎重を重ねることが重要です。
経済活動の再開を切望する方達から見れば、今回の新型コロナウイルスワクチンや治療薬の開発・承認がモタモタしているように感じられるかもしれませんが、臨床試験には長い時間が必要なのです。あまりにも前のめりな開発が、結果的に人々のワクチンに対する不信感を招くようなことにだけはなって欲しくないと願っています。

逆に考えれば、現在承認されているワクチンはこの狭き門を通ることができた信頼の置けるもの、と捉えることができるのです。

ワクチン接種は自分だけのためじゃない

ワクチン接種は病気の治療とは異なり、健康な人があえて外から異物を取り込むのですから、尚のことその必要性を理解して接種するべきものです。単純に「自分が感染しないため」だと考えていると道を見誤ってしまいます。ワクチンという強力な武器が手に入ったからには、その感染症に完全勝利することこそが最終目的なのです。

免疫を持つ人がいればそこで感染の連鎖はブロックされて大流行にはなりません。ワクチン接種で免疫を持つ人が増えれば増えるほどウイルスの居場所はどんどん無くなっていきます。ヒトにしか感染できないウイルスなら、もう逃げ場はありません。消え行くのみです。そして、もし天然痘のようにこの世界から根絶することができたなら、ワクチン接種からも解放されることになるのです。

終わりに

ジェンナーが種痘を確立してから250年、新型コロナウイルスの脅威に直面し、世界中で今ほどワクチンが切望され、これほどまでに早いスビードで開発が進むことは、未だかつて無かったことです。
ところがこの流行が原因で、3歳児以降の定期予防接種の接種率が低下しているそうです(日本小児科学会による)。ウイルスを恐れるのであれば、なおのことワクチンの大切さを理解してどうか接種を受けていただきたいと思います。

ワクチンを接種することが、感染症から未来の子供たちを解放することにつながると考えれば、少しだけ世界の色が違って見えてくるかもしれません。

 

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